レジオネラ症と水の管理
レジオネラ症とはレジオネラ属菌による感染症です。主な症状は、重症になる肺炎と一過性のポンティアック熱と呼ばれる2つに分類されます。患者は比較的高齢者が多く、人口10万人当たりのレジオネラ属菌の罹患率は年々上昇しており、患者数は11年前に比べ約10倍に増えています(2015年は約1500人)。
肺炎の症状は全身倦怠、頭痛、高熱、咳、腹痛、下痢などです。ポンティアック熱は発熱、全身倦怠などですが比較的症状が軽く、数日で治癒します。
水たまりには細菌を餌とするアメーバが多数生息していますが、レジオネラ属菌は特定の種類のアメーバに寄生してその中で増殖します。増えた菌はアメーバから放出されてさらに別のアメーバに寄生し次々と増えます。
レジオネラ属菌は、代表的なレジオネラ・ニューモフィラをはじめとして約50種類知られています。いずれも水たまり、川、湖沼などの自然界に広く分布していますが、人工的な水環境(冷却塔、循環式浴槽、給湯設備、噴水など)でも増殖しています。これらの水がエアゾル(微細な水滴)となって、呼吸により肺内に吸入されレジオネラ属菌に感染します。
冷却塔の水はミストになって空中に散らばるので、特に問題視されています。ヒトからヒトへの感染はほとんど報告されていません。感染リスクの高いヒトは、長期間タバコを吸い続けた糖尿病患者、免疫抑制剤使用者、がん患者など免疫力が低下する疾患を有している患者や抵抗力の弱い高齢者です。
レジオネラ症発症までの流れ
冷却塔(クーリングタワー)
ビルの屋上に設置してあるエアコン冷却塔を時々チェックしてレジオネラ属菌の有無を調べてください。菌がいる場合は速やかに清掃・消毒しましょう。
衛生管理が不十分な浴槽や洗い場にはヌメリがあります。このヌメリは細菌が形成したバイオフィルムと呼ばれる生物膜で出来ていて、この膜の中でレジオネラなどの細菌が増えています。膜に包まれているので、細菌は消毒薬や紫外線などに抵抗性があります。また、意外と盲点なのは、シャワーヘッドでもレジオネラ属菌が増えている場合があります。浴場の衛生管理を行うときは浴槽、洗い場、シャワーヘッドをよく洗ってバイオフィルムを形成させないことです。
高齢者など感染リスクのあるヒトはバブル装置、打たせ湯などがある浴槽水の利用を避けた方が無難です。また、冬場室内の加湿器内の水にレジオネラ属菌が発育していることがあるので(タンク内にヌメリがある)、加湿器の水はこまめに取り換える必要があります。さらに噴水などの細かい霧状の水滴にも注意しましょう。感染リスクのあるヒトは特に注意してください。
北里環境科学センターでは、冷却塔の水の検査、温泉や老人ホームなどの浴場の水、プール、修景水などの検査を行い、レジオネラ属菌が生息しているか否か調べています。これらのサービスを提供している施設においては安心してお客様に利用していただける様に、レジオネラ属菌の検査をお勧めします。病気は予防が最も大切です。
これらの検査につきましては、下記連絡先までお気軽にお問合せください。
【お問い合わせ先】 一般財団法人 北里環境科学センター 環境調査課 TEL:042-778-9208 FAX:042-778-4551 E-mail:info@kitasato-e.or.jp |